BATMAN Funny the Phantom

 

苛々することこの上ない…―――そう思ってはみたものの、結局はどちらが欠けても歯車と言うやつは上手くは回らないものなのだ。
ジャック…既に怪人として名を馳せるジョーカーは、生涯にわたって好敵手となるであろう黒衣の英雄の姿を思い浮かべた。
闇にまぎれて羽音ひとつ立てることもないであろう羽ばたきは夜風のほんの悪戯程度の動揺を空中にもたらし、彼のしなやかで強靭な肉体はその危うくも脆い本心を覆い隠すラバースーツのように彼自身を覆い、それら全ての外界遮断壁を身に纏わせて現れるのだ―――忌々しい、蝙蝠男め!
ジョーカーはクラウンプリンスたる所以の笑みを浮かべつつも、凶悪な目付きで居室の天井を振り仰いだ。
何故俺は、ヤツの息の根を止められない?
一思いにやってしまえばいいのだ。
何故俺は、ヤツを殺してしまわない?
この指に力を込めて、脆弱たる人間である仮面の奥底を暴き、絶頂にも似た苦悶を披露させてしまえばいいのだ。
このまま続けることにどれほどの意味があるだろう?
取り止めもなく何度も繰り返す戯事(ゲーム)は、まるで悪意に満ちた狂気の自慰とも言える。
「いや、違う」
彼はおもむろに立ち上がると、白い面と対照的な毒々しいほどに紅い唇を歪める…白い歯が覗き、彼は満面の笑みを浮かべた。
「だからこそ、それは必然であり、必要不可欠な人生の要素なのだ」
浅はかな絶望にまみれてどれほどの価値があるというのだ。
軽やかな失望に見舞われてどれほどの価値があると。
あの恐ろしくも愛しい蝙蝠をこの手で射止めたとして、その命をすぐさま奪い去ってしまうことにどれほどの有意義さがあるというのか。
実に愉快だった。
「おまえを生かすも殺すも…それも生命だけではなく…俺自身の手によって左右されるのだ」
おまえにとっても、俺にとっても、そのどちらの存在もが失われてはならない絆で結ばれているのだ―――ジョーカーは薄ら寒い暗闇の中で、モニターに映し出されたゴッサムの守護神を見詰める。その目は冷たくもあり、鋭利な刃物のような残虐性を持ちつつも、また新たな光を帯びていた。
愛憎表裏とは言ったものだ―――
     そうは思わないか、バットマン?

彼は実に愉快な気分を味わいながら、そっとモニターの影に指を這わせた。

 


2003/09/11

バットマ〜ン♪の話その1。
ジョーカー様の悩み事。笑。
私の好きなコミカル調のアニメが持ってた雰囲気は一体どこへやら…ですな。

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送