この手には、貴方を奪う術がある。
それでも、私はそれが出来ない。

 

THE BIG-O Roger/Angel #6 "The Death, End, and You" 

 

 迫りくる夕刻の暗闇、その紺色とも藍色ともつかない夜の帳が降りる頃、それらが私を覆い隠す。
 なんて残酷、なんて甘美。
 貴方の言の葉がこれほどまでに私の胸の内を打ち砕き、ボロボロと崩れ落ちていく様な錯覚が生まれていく。
 その優しさも冷たさも、いつしか私を壊していくのでしょう。その手に宿る温もりも私を見詰める瞳も、全ては私の為ではないのでしょう。
―――貴方が私のものではないなんて、いつだって知っていた。
 天を埋め尽くす重たげな雲がやがて涙を落とし、濡れそぼる私は捨て猫の様に惨めな姿。
 失くした翼の様に、靴を失くしたこの脚は薄汚れて傷付くだけだった。

―――想い出して。
 ここに私が居た事を、いつしか貴方と共に居た事を、貴方の目が私を映していた事を、私が貴方を見詰めていた事を。
―――忘れないで。
 私たちが、寄り添おうと試みた事を。

 退いては寄せる波の様に、心を打ち震わせた思い出がある事を。
 移ろいゆく日差しの様に、様々な様相を見せ付けて変わっていった事実を。
 それでも、約束などひとつもないままに、きっと私は貴方から去っていく。
 貴方は私の背を追う事はなく、伸ばした手で私を捕らえる事もなく、戸惑う様に名を呼ぶだけでしょう。
 そして、その貴方に寄り添うのは、"彼女"なのでしょう。
―――貴方の隣に、私の居場所など初めからなかったのだから。
 盗まれた時間を追い求めるのは愚かしくも愛しい人間の性、奪われた祝福と与えられた断罪にもがき苦しむのは罪深き人間の所業…終わることなく繰り返される滑稽な悲劇は、突如として断ち切られることもある喜劇なのでしょう。あまりに奇妙で、あまりに悲しくて、忘れることでしか補う事も出来はしない馬鹿げた舞台。
―――まるで貴方と私の関係の様に。 
 いっそ、この引き金を引いてしまえれば、どれだけ楽になるでしょう。
 貴方と私と永久の時間を。
 それでも、この冷たく反射する無骨な武器は、私を裏切るだけ。きっと打ち抜くのは私の胸だから。
 出会わなければ良かったと、貴方は言ってはくれないのでしょう。
―――例え、それを私が望んだとしても。
 優しくて残酷な貴方は、何も言いはしない。私の還る場所が貴方では無いと知っていても、貴方の傍には居場所が無いと気付いていても、貴方は決して言いはしない。

 それがどれほどの苦しみを私に与えるのか、分かりもしないのだから。

 

END

 


久々のビッゴ小説。そして、久々のロジャエン…なのに、またもや救われない二人です。
なんか、ダメみたいですね、私には;
いつか幸せにしてあげたいのに〜
この二人にどうか、誰か、ハッピーエンドをあげてください。ううっ(ToT)

2005/10/9 『THE BIG-O/The Death, End, and You/ROGER&ANGEL』 by.きめら

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送