あなたは優しくて残酷。
あなたは私の答えを引き出そうとはせず、「待つ」ことを選んだ。
それがどれほどの失望を私に植え付けるかも知らずに。

でも、私は怯えている。
自分の中に芽生えた”出来事”に、そしてあなたがそれに気付くことに。

私は怖い。
あなたがそれを知った時に、もし…もしも、信じられない”物”でも見るような目をしたら。
私を見つめ、そしてその視線を外してしまったら。
あなたの中に私の居場所がなくなってしまうのが、私は怖い。

 

THE BIG-O  Roger/Dorothy #1 "Doll's Dream6"

 

「今、呼びに行くわ」
 ドロシーは電話の相手にそう言って、受話器をテーブルの上に置こうとした。だが、その相手はやんわりとその行動を押し留める。
『別にいいわ、大した用はないの。そうね…少しあなたとお喋りしてもいい』
 大した用がない時に彼女がここへ電話することはなかった…いつの間に、用もないのに電話をかけてくるような関係になったのだろうか?
 そんな疑問を覚えつつ、ドロシーは答えた。
「私はあなたと話す用はないけれど」
『悲しいことを言ってくれるわね』
 彼女は電話口で笑った。
 それは差して癇に障るような笑い声ではなかったが、ドロシーは明らかに自分の中で彼女に対する不愉快さが募っていくのを自覚していった。悪気があってのことではない…声の調子からも、故意に彼女がドロシーに対してからかいや皮肉を言っているようには思えなかった。それでも、ドロシーは何故か彼女を自分の意識の中から排除したい気分に囚われていく。
『私、随分とあなたに嫌われてるみたいね』
「………」
 しばらく口をつぐんだドロシーは、何か言おうと口を開きかける。だが、エンジェルは間合いを読んだかのように先に言った。
『それには答えなくて結構よ。その通りだ、なんて言われたら余計に悲しいから』
 ドロシーはエンジェルの言葉が真実かただの冗談か判断つきかねて、顔をしかめる。
『でも、その沈黙は”No”である、と受け取っておくわ』
「…勝手な人ね」
『それも褒め言葉だと思っておくわ』
 その声には、微かに悲しみが込められている…人間的な”感情”はなくとも、ドロシーはそれが「悲しみ」であると判断して、彼女の声を聞き取った。
「それで、何の用?」
 エンジェルは煙草をふかしているのか、一呼吸置いて息を吐く。それからまた言葉を紡いだ。
『別に。ただ、あなたが電話口に出たから、ちょっと話してみたかっただけよ』
 まだ会ったこともない人間に、話してみたかったなどと言われる筋合いはない。もとより、ロジャーからどんな説明を受けているのか分からないが…アンドロイドへの単なる好奇心でそう思われたのだとしたら、それこそ最悪だ。どちらにしても、彼女の目的は良く分からないが。
「…やっぱり、ロジャーに代わるわ」
 ドロシーがそう言って会話の終わりを告げると、エンジェルは小さく笑った。
『彼と話してもいいのかしら?』
 何を言い出すんだろう、この人は…ドロシーは理解不能な質問に、顔をしかめる。
「ロジャーに用があるからあなたは電話をかけてきた。もとより、私と話している意味の方がわからないわ」
『そうね、あなたの言う通りよ。だけど、私はあなたと話したいと思ったから電話したの』
「…何故?」
 やはり、彼女の目的が良くつかめない。
 ドロシーはいぶかしむ様に相手の言葉を待ったが、エンジェルは先ほどの言葉で会話の終焉を迎えたらしく、何も言わなかった。

 電話に出たロジャーが最初に聞いた相手の言葉は、多分な嫌味とも皮肉とも取れるものだった。
『可愛いお人形さんが話してくれたわ。とっても、嫌われてるみたい』
「…それで、用件は?」
『あなたまでそう言う風に言うのね。まったく』
 エンジェルはわざとらしい溜息を吐いたようだった。幾分か機嫌を悪くしていたロジャーは、語尾を多少強くしてさらに問いかける。
「ドロシーには…君が機嫌を損ねるようなことを言ったんだろう」
『あら、酷い。私がどうしてそんなことを言う必要があるの?』
「それはこちらが聞きたい」
『私が彼女を傷つけるようなことを言ったと、あなたはどうしても決め付けたいのね』
 エンジェルはどこか可笑しそうにそう言った。まるで微笑ましい光景を見ているかのように。
『まあ、いいわ』
 そう言って、彼女は仕事の話へと話題を切り替えた。少しだけ戸惑うようなロジャーの声をからかうように…彼がすぐに追いついてくることも分かっていたから。
 ドロシーは、電話で彼女と話すロジャーの姿を居間のソファに座ったまま見つめていた。
―――あの人は、一体何をあなたと話しているの?
 ロジャーはいぶかしむ様な表情や、少し驚いた表情、それから厳しく顔をしかめたりしている。
―――仕事の話しだと、分かっているはずなのに。
 ドロシーは、自分の感じた初めの疑問を振り払うかのように心の中で呟いた。そして、自問を繰り返す。
―――だったら何故、私はロジャーとあの人が話していることに”苛立って”いるの?
 これまでにも幾度となく、こんな状況はあった。電話を取り次ぐことも何度もした…それなのに、今日に限って彼女はドロシーと「話したい」などと理解できないことを言い出したのだ。
―――理解できない行動に、私は苛立っているの?
 ロジャーに対してではない…あの謎めいた女の行動に苛立っているのだろうか。
 いつの間にか電話を切ったロジャーが、ドロシーを不思議そうに見つめていた。気付いたドロシーが顔を上げ、ロジャーを見つめ返す。
「仕事?」
「…ああ」
「そう」
 それだけで十分…だったはずだ、前ならば。
 短い問いかけと短い答えだけで、他に言うべきことなどありえなかった。それなのに、今は何故こんなにも、こんな小さな会話がこれほど強く「空虚」に思えてくるのだろう。
 ロジャーは少しばかり戸惑うような表情を浮かべ、しかし何も言わずにドアに向かっていく。
―――私は、彼女が言い出すまで待つと決めたんだ。
 彼女を見ていると、疑問をぶつけたくなる衝動に駆られる…何故、そんな目で私を見るのだ?と問い詰めたくなる。だが、追い詰めてどうなることでもない。まして、彼女を言葉で追い詰めることなど出来るはずもないのだと分かっていたから。
「ロジャー」
 ドアを開けたとき、ドロシーの呼ぶ声が聞こえる。
 ロジャーは振り返ると、無表情な少女アンドロイドに「なんだ?」と答えた。
「あなたはいつも質問するのに、今度は何も言わないのね」
「ドロシー…」
 一瞬だけ呆気にとられた顔をして、ロジャーはドロシーを見つめる。しかし、すぐにいつもの微笑を浮かべた。
「君が話したくなるまで待つつもりだからね」
 そう言い残し、彼は部屋から出て行った。

―――問い詰めてくれればいいのに。
 そうすれば、もしかしたら自分の中にある理解不能な出来事の正体もつかめるかもしれない。
―――でも、彼はそうしない。
 彼女の意思を尊重して…だということは分かっている。だが、そうすることが彼女にとって「優しくて残酷な」仕打ちだと言うことには気付いていない。
「私は、追い詰められたいの?」
 そう問いかけても、その答えを告げてくれる存在は一人も居ない…自分を除いては。
―――誰も、教えてくれないことなのね。
 それはきっと、自分で導き出さなければならない、真実なのだろう。

 巨大な格納庫に佇む、物言わぬ黒い巨人…ビッグ・オーという名の謎に満ちたアマデウスをドロシーは見上げた。
―――私はあなたのように、ロジャーに必要とされているかしら?
 いや、その疑問はまったくの的外れだろう…彼女は自分でも分かっていた。
―――私は”居場所”が欲しいの?
 ここに居たい…居るだけの理由が欲しい…それも、彼に必要とされながら。
 人はそれを”エゴ”と呼ぶのだろう。そんなものがあるはずもないアンドロイドの自分が、それでも確かにそれを感じ始めている。
「ドロシー、どうしました?」
 遥か上を見上げると、ビッグ・オーの顔の下…搭乗席はそれを覆っていた壁が今は開かれていて、そこにノーマンがいた。
 ノーマンはビッグ・オーの整備と武器の補充を行い、搭乗席で起動の最終チェックを行っていたのだった。
「手伝うわ」
 ドロシーがそう言うと、ノーマンは「もう整備は済んだので、少しそこで待っていてください」と答える。
「メンテナンスは済みましたから、お茶にしましょう」
「…つきあうわ」
 ドロシーがそう答えると、ノーマンは嬉しそうに微笑んだ。

 人間とは、不思議な生き物だ…ドロシーは目の前の老紳士を見つめながらそう思った。
 ドロシーはアンドロイドだから、食事もお茶もすることはない。だが、人は”形ばかり”でも彼女が付き合うことを喜んでいるようだった。それは、亡き父の時とも同じである…そんなことを思い出す。
―――死んだ娘を模して作られた私。でも、お父様は私が微笑んだり歌ったり、ピアノを奏でたりするのを嬉しそうに見つめていた。
 決して本物にはなれない自分なのに。
 ノーマンは広いキッチンの中に設置されたテーブルの上にティーセットを置く。それから、少し前のクライアントが交渉成立の報酬と共に持ってきた菓子を出していた。
「ロジャー様はあまりこの菓子が好きではないようで…」
 そう言いながら、彼は貰い受けたことを喜んでいるようだった。
 そんなノーマンを見つめながら、ドロシーは呟いた。
「人間って…」
「は?なにか言いましたか?」
 ドロシーは「いいえ」と答えた。
 ノーマンは、形だけでもドロシーに紅茶が満たされたカップを差し出す。目の前に置かれたそれを静かに見つめ、ドロシーは「ありがとう」と言った。
「最近、悩んでますね?」
「…誰が?」
 はぐらかすようなことをアンドロイドはしないが、ドロシーは主語のないノーマンの言葉に尋ね返す。
 彼は言葉を濁すことなく再び尋ねた。
「ドロシー。何かありましたか?」
「別に。どうして?」
「メンテナンスをした後も、やはり調子が悪いようなので」
「問題点は何も見つからなかったわ」
「ええ、その通りです」
 ドロシーの言葉をすぐに受け止めながらも、彼は言葉を返した。
「バグではありませんよ」
 顔を上げ、ノーマンを不思議そうに見つめるドロシー…その彼女に、彼は穏やかな笑みを浮かべた。
「確かにバグではありません。”メモリー”ですよ。誰のものでもない、あなた自身のメモリーです」
「…分からないわ」
「分かっているはずです、ドロシー。分からないふりをしている…分かりたくないからです。確かに、新しく芽生えたメモリーは理解しづらいものですが」
「私の中の新しいメモリーって?」
 ノーマンは答えなかった。だが、暖かな笑みを浮かべて、彼女を見守っている。
「…意味が分からないわ」
 憮然とした表情を浮かべたアンドロイドに、それでもノーマンは微笑んでいる。宿題に悩む子供でも見るかのように。
 突然、ノーマンは話題を変えた。
「ベックに操られてロジャー様を殺しかけた時のことを…覚えていますか?」
 ちくり、と”心”に痛みが走る。彼を殺しかけた…メンテナンス時にノーマンはロジャーの指示通りにメモリーを消さなかったため、その時のことも覚えている。だからこそ、決して口に出すまいと今は思っているあの「言葉」のことも覚えている。

「おまえらが来ることだってちゃんと計算に入ってるんだよ。カラス野郎に相応しい死に方も、な」
「彼女に…さわるな!」
 ロジャーの怒号が響く。
 だが、薄笑いを浮かべたベックの手に握られたペン型遠隔装置がドロシーの身体を操る…ドロシーの手が強引に、倒れていたロジャーを引っ張り立たせた。
「ドロシー…?」
 戸惑うような声が耳を掠める…だが、今の彼女にはそれを聞いてもどうすることも出来なかった。
 ただ、耳鳴りのように機械言語の命令が頭の中に響いている―――この男を殺せ、と。
「ドロシー…!」
 掠れた声が彼女の"心"を取り戻そうと呼びかけてくる。
 抱きしめてくる両手は、見た目の華奢さとはかけ離れた強さを持って、彼の身体を締め付けていった。

『ロジャー…大好きなロジャー』

 耳障りなノイズめいた音を含んだ冷たい彼女の声が聞こえる…不意にロジャーは抵抗をやめた。そして、諦めたかのように彼女を見つめる…薄れかける意識の中で。
 その彼の目を見つめた時、彼女ははっとした。
―――自分が今、殺そうとしている男は…
―――"私は誰を殺そうとしている"?
 頭部に取り付けられたヒューズが音を立ててショートする。
「ドロシー!」
 異変に驚いたベックは慌てるように遠隔装置を弄り回すが、それは過度の操作によって壊れてしまう。
 ロジャーは突然意識を失った彼女を抱え、けれども支えきれずに思わず膝をついた。
 その目は怒りを湛えて、ベックを睨み上げていた…

 ドロシーは答えずにノーマンの顔を見つめた。ノーマンは、微かに表情を曇らせたドロシーを見て、言った。
「もし、その時のことを思い出すと辛い気分になるのでしたら…失礼なことを言いました。ですが、聞きたいことがあるんですよ、ドロシー」
「気にしてないわ。…聞きたいことってなに?」
「ベックが取り付けたヒューズが安物で…力を込めたときにショートしたからこそ、ロジャー様を殺すまでに至らなかったのだと私は思いました。それとも、自分の意思で止めたのですか?」
 静かな声が問いかけてくる…ドロシーはそれでも小さな動揺を見せ始めていた。答えを促すのでもなく、問い詰めるのでもなく、ノーマンはそう言った後にお茶を飲む。
「ロジャー様はそうおっしゃいました。”ドロシー自身がそうした”のだと」
―――ロジャーが…そう言った?
「二度とこのようなことがないように、メモリー回路を取り替えるよう言ったのですが…」
 そこで言葉を止め、ノーマンは微笑んだ。
「…それで、ロジャーはなんて言ったの」
「”このままでいい”と」
「…ノーマン」
「私も今では、メモリー回路を取り替えずに置いたことを良かったと思ってますよ」
 はっとしたようにドロシーはノーマンを見やった。
 ノーマンは少なからずともドロシーのメモリーを見ているはずだ。彼女が口にしない疑問や、言いようのない不調、そしてその原因であるバグの正体も知っているのかもしれない。
 ドロシーの思考を読み取るかのように、老紳士は呟いた。
「先ほども言ったように、バグは見つかりませんでした」
「バグ…じゃ、ないの」
「ええ、そうです。ドロシー。それは、バグでも故障でもない…”メモリー”なんです」
「私の…メモリー…」
―――私自身のメモリー。
「バグじゃないとしたら、私は今、正常に起動しているということね」
 いつもと変わらない冷たい声だが、その言葉は僅かばかり変わってきたようだった…ノーマンはそう思い、ただ黙って紅茶を口に運んだ。

 私は覚えている。
 ベックに捕らえられた私を、彼が必死に取り戻そうとしてくれたことを。
 そして、私が彼に言った言葉も…例え操られていたとしても。
―――真実でもなければ嘘でもない言葉。そんな曖昧なものを、私は知らない。
 だから、きっとこれは真実。
 きっと、私の中の本当の答え。

 テラスに立つ男の後姿を眺め、ドロシーはその数歩も後ろに佇んでいた。
「ロジャー…」
 夜風に消される事もなく、その声は名前の持ち主を振り向かせる。
「どうした?」
 彼はそう言って、小さく微笑んだ…ドロシーが予想していた通りの優しい顔で。
「不調の原因が分かったの」
 ロジャーは一瞬だけ驚いたように彼女を見つめ、それから表情を和らげた。
「それで?」
「不調の原因は"あなた"だった…」
「"私"が?」
 ドロシーはゆっくりとロジャーに歩み寄る。そして、自分より背の高い相手をじっと見上げた…彼が息を小さく呑むのも見逃さずに。
「私はあなたと出会ってからたくさんのメモリーを手に入れてきたわ…誰のメモリーなのか分からないものや、今まで知らなかったものさえ」

「…あなたが私に教えたのよ」

 すっと身を寄せたドロシーを受け止め、ロジャーは驚いたように彼女を見下ろす。だが、彼女の手が遠慮がちに自分の背に回されるのを感じて、苦笑めいた表情を浮かべると共に彼女の華奢な身体を優しく抱きしめた。
「"あの人"が誰なのか…私は何も知らない。でも、知りたくない」
「エンジェルのことか?」
 彼女の名をロジャーが口にした途端、ドロシーはその名を拒絶するように自分の頬をロジャーの胸板に押し付けた。
「ドロシー…」
―――そういう…ことだったのか。
 ドロシーの考えはロジャーにとっては甚だ勘違いと言ってもいいようなものだった。もちろんエンジェルは謎めいた美女だが、どちらかと言えば仕事上は疎ましく思うことも多かった…それに反する願望がなかったわけでもないが。
 頭上でロジャーが溜息を吐くのを聞き、ドロシーは身体を離した。見上げると、自分を見下ろす優しい眼差しとぶつかる。
「…呆れているのね」
「いや」
「じゃあ、なに?」
 いつもと変わらない表情に見えるが、ドロシーの中の不安を微かに瞳から感じ取って、ロジャーは言った。
「前に、何故君がこの場所に立つのか…街を見下ろす時に何を思うのか尋ねたことがあっただろう?」
「ええ。でも、何故今?」
「その答えを教えてくれないか?今聞きたいんだ」
「………」
 ドロシーはロジャーを真っ直ぐに見つめたまま、しばらく口をつぐんだ。それから静かに言葉を紡ぎだす。
「…分からないわ」
 正直なところ、はっきりとした答えをドロシーは見つけてはいなかった。ただ、漠然とした…不明瞭な”希望”を持って、ここに立っていたとしか言えない。
 ドロシーの答えを聞いて、ロジャーはそっと彼女の冷たい頬に手で触れた。彼の手の暖かさを…人間とは異なる感覚器官が…感じる。
「私はこれまで、その日に感じた疑問や疑念、そして長年感じてきた違和感をこの場所に立って考えてきた。立ち向かうべき相手は誰なのか、私は何者なのか…。だが、いつからか変わった。君がいつもいるから、私はここに立つようになったのかもしれないな…」
 それは語りかけると言うよりも自分に言っているようだった。少しだけ遠い目をしたロジャーを、ドロシーは不思議そうに見つめる。
「ロジャー…?」
「君がこうして私の傍にいることを、私はいつの間にか当たり前に思い始めていた」
「私はアンドロイドよ」
―――人間になりたいとか、そんなことは思わない。
 でも、人間ではないことがこの不確かな感覚に壁を立てかけている。それでも…人間ではないからこそ、この微妙な絆は繋がり続けている。変えることの出来ない現実だけがある。
 ドロシーはそう思いながら、彼の顔を見つめた。しかし、ロジャーはそんな彼女の疑念を覆すような言葉を紡ぐ。
「いいんだよ。人間のふりであっても、君がアンドロイドでも、そんなことは関係ないんだ。私は…ドロシー、”君自身”でいて欲しいのだから」
 ロジャーは上体を少し屈める…一瞬の出来事にドロシーは四肢を強張らせた。

“このままで”

 その優しい囁きは、髪を揺らす風と共に彼女の耳を掠めていった。

 

END

 

 


アンドロイドの間合いを掴むとは…恐るべし、エンジェル!
そして、アンドロイドの思考を読み取るとは、恐るべし、ノーマン!
と自分でも思うようなキャラの行動(笑)
つーか肝心なところまで軟弱者なロジャー…女に頼りすぎ。 それでも彼から行動させたのですが。
しかし、こんな少女漫画思考に走るとは自分でも思ってませんでした…ハッピーエンドは予定してたんですけどね。笑。
…我ながら、クサすぎるセリフだらけで「…ふぉおぉぉ…っ」と画面を前に悶絶してしまいました(抱腹絶倒してたと言える)

これで”Doll’s Dream”は完結です。
とはいっても、別ストーリーでロジャー/ドロシーは書きますので、この二人の話自体が終わったわけではありません。
今回は自分でも苛々するような話だった(笑)ので、今度はほのぼの系が書きたいなあと思ってます。
バカ話の中の痴話喧嘩(?)は”Big-O is melancholy”で書いちゃったけど。汗。

2003/3/7 『THE BIG-O/Doll's Dream6/ROGER&DOROTHY』 by.きめら

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