DOGMA 喪失

 

失った分だけ、得た物だってあるんだ。

だって、前よりずっと側におまえがいるから。

ここでおまえと気の遠くなるほどに長い時間を共有できるのは、俺だけなんだ。

何もかも遠くなってしまった故郷…戻れないのだから。

俺と一緒にいるしかないんだよ。

 

どうしてそんな顔をしてるんだ?

能力もそのままだし、したいと思える事ができるんだぞ。

罪人を殺すのはただの趣味じゃない、俺の本質なんだ。

そうなる様に創られてるから…俺は『死の天使』だったんだぜ?

分かってるならなんでそんなに傷付いた顔をするんだ?

昔から…遠い遠い昔から、俺はずっと変わらないでいるのに。

天に居ようと地上に居ようと俺は俺だ。

 

…おまえはいつのまにか暗い目をする。

何もかも憎んで、嫉んで、口にする言葉は人間や神に対する愛だけなのに。

誰よりも彼らと彼女を憎んでいる。

変わっちまったのはおまえの方さ。

 

確かに失ったものは、この世のどれにも比較にならないほど大きな存在だ。

俺だって…。

でも、少なくとも一人ぼっちじゃないんだ。

おまえがいるから。

良くも悪くも俺たちは互いに依存し合って生きていかなくちゃいけないんだ。

一人だって平気だけど…退屈しちゃう。

おまえが側にいるだけで、もう欲しいものなんてない。

天も、神の愛も、もう欲しがったりしない。

でも…おまえのその視線を惹き付けていられるだけの力が欲しい。

 

ねえ、バートルビー。

どうして人間をあれほど思いやっていたのに、その十分の一も俺には優しくしてくれないんだ?

どうして俺を優しく抱き締めてくれない?

どうしてあれほど同情していた人間を、闇にぎらつくデーモンみたいな目で睨んでる?

 

失ったものは大きい。

俺は昔のおまえを失った。

おまえが得たものはなんだ?

怒り、悲しみ、喪失感、焦燥感…。

失ったものは?

天における永久居住権。

希望、心の平安、神への敬愛…。

 

そして…『俺』。

 

 

壊れてしまった、可哀想なバートルビー。

俺じゃあ、おまえの心に開いた穴を埋められなかった。

千年と言う長い年月も。

俺は失った愛を埋められるほどの存在じゃなかった。

 

ねえ、バートルビー。

嘘でもいいよ。

一度でいいんだ…俺が一番だよって言って。

そうしたら、きっと俺はおまえを止められた。

おまえが罪を起こす前に。

高慢な『悪魔』にならないように。

誰よりも…どの天使たちよりも、愛していた人間を殺す前に。

おまえの手がこれ以上ないくらい血に染まる前に。

 

俺がおまえを殺したのに。

 

 

さようなら、バートルビー。

俺の愛した、慈悲深い天使。

もうこれ以上誰も苦しまないように…神よ、お願いです。

どうか、俺の友人を救ってください。

罪人の最後の願いを、どうか聞き届けてください…。

あなたを心から愛する一人の天使を。

俺ではだめだったから…

 

その柔らかな両手で、抱き締めてください。

 

遠い昔に失った…

 

あなたの愛をください。

 

END

 


バートの「Sweet memorry」と対になって、今度はロキちゃん。
何も考えていないようで、実は深く考えているんだよ…って設定はどうか、と言う話です(何)
案外、自分勝手なのはバートの方だと思うからさ。
"能天気で楽観的で短絡的"だけれど、ロキは友人思いで性質が変わらないのと同じく変わらず天使のままの魂でいると思う訳で。
するとこんな風に俺は妄想してしまう、と(笑)
当時のあとがきが残っていないので、その頃何を思って書いたのかは思い出せないのですが…とにかくロキ好きだと言う事は明白か。
これも懐かしいファンフィクでした。

 

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