フレディvsジェイソン 史上最凶の闘い

 

こんなことがあるなんて、思いもよらなかったのに。
いや、こんなことが在り得るはずがないんだ。
何があったって俺は俺で、俺以下でも俺以上でもない、最ッ高にステキなショーになるはずだったんだ。
―――きっと、これは悪夢に違いない。

欠けた月がぽっかりと浮かび上がった夜、彼はぎらぎらと煌く"爪"をうっとりと見詰めた。
「まさしく、俺様だ!」
長年失ったままの悪夢が今、この街に甦るのだ―――やたらと粘る紅い血がしとどに爪を彩る。
忘れ去られた過去の亡霊、居場所を亡くした愚かな道化…なんとでも言っていればイイ。例えそれでも、俺の名前を一旦聞けば、俺はいつだってそいつの夢に訪れる。好きなように暴れる。やりたいようにやる。そう、かつてそうしていたように。

なのに、あいつ―――忌々しい木偶の坊め!―――が全て台無しにしやがったんだ。

「何とか言えってんだ、この能無し野郎」
相変わらずの悪趣味極まりないヤツの"戦利品"たちに囲まれながら、俺は怒鳴った。口の中や鼻の中、果てには耳も目の奥も、こいつと同じぐらい忌々しいクリスタルレイクの水が入り込んでしまっているが、まあ、首から下がないので、肺が水でいっぱいになって溺れ死ぬことはないだろう。だからと言って、いい気はしていないのは当たり前だが。
そんなことより。
あいつは相変わらず明後日の方向に顔を向けたまま、どでかい体を古ぼけたソファに横たえたまま無言だった。
「聞こえてんのか?それとも俺の声すら聞き取れないほどおまえの頭は腐っちまってるのか?」
寝ているのかもしれない。
「だからウスノロっていうんだよ!相変わらずボロ雑巾みたいな格好してやがって、え?野良犬野郎」
いや、死んでるのかもしれない。
「も一度、母ちゃんの夢でも見たいのかよ?」
「…………」
…少しだけ反応した。
首だけをギギギと動かして、こちらを見やる―――怒っているようだった。
「なんだよ、豚野郎?」
そう言って口汚く罵ってやったが、それでもヤツはまた顔を天井の方に向き直してしまう。
―――俺様を無視しようってのか?
俺様の命令を無視した上に計画を邪魔したこの大馬鹿野郎、そこら辺の人間と同じように俺様をトロフィーのようにコレクションとして並べやがって、ふざけきってやがる。
俺はあの、かつて人間だった頃に多くのガキを震え上がらせ、焼き殺されてからは街中を脅かした伝説の悪夢だぜ?
その俺を首だけの"アホ"丸出しみたいな風体を晒させやがって…ちくしょう、せっかく戻ってきた俺様の爪まで、あの湖の底に沈んじまった。

何があったのかって?
んなこと聞くだけヤボってんだ…詳しくはビデオ屋にでも行って借りてくれ。

おっと、そんなことはどうでもいい。
俺は怒ってるんだ。もちろん、すぐにでもいつものようにガキどもが怯えてくれればいつでも現役復帰できるが…それにしても、今はどうすることも出来ない状況なのだ。
「おい、おいってば!聞けよジェイソン!」
「…………」
あいつはもう一度こちらに顔を向ける。
醜悪な顔を覆い隠すアイスホッケーの薄汚れたマスクの奥から、虚ろな目が(殆ど死んでるんじゃないかというような)視線を漂わす。
「悪い子だ、俺の言葉が分からなければ、さっさと眠っちまえ。眠った後にお仕置きしてやる」
自慢のぎざぎざな歯を見せるように、俺はニッと笑った。
だが、あいつはさっきと同じように視線を外す。
「…………」
ほざいてろ、バーカ。―――そんなことを言われた気になった。

むかつく。
非常にむかつく。
今直ぐ眠れ、たっぷりと後悔させてやるぜ。


何を思ったか、何故かこの二人。
映画を見た直後の興奮状態だったに違いない…旧映画サイトの掲示板にショートSSとして載せたものです。
当時のあとがきが無いので、どういった心境だったかはイマイチ分かりませんが。
とりあえず何だか楽しかったです(笑)

 

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