見上げれば、痛いくらいの青。
振り返れば、広がる光に目を細めるアナタ。
私は少しも変わらずにこの気持ちを両手に抱く。
温かい、切ない、苦しい、甘い、この思いを。
史上最強の弟子ケンイチ 空色 |
昔の私は弱虫だった。
とってもとっても弱虫だった。
いつも臆病で、話しかけるチャンスすら見つけようとしなかった。
今だって、今だって。
「白浜くん」
そう言って呼びかければ、彼は振り返ってくれるけれど。
でも、それは、ただ呼びかけられた事に振り向いただけ。
「どうしたの?泉さん」
不思議そうに小首を傾げて、名前を呼んだくせに急に怖気付いた私を見つめてくる。
―――私は弱虫だ。
言いたい事の半分も言えない。
思った事の半分も出来ない。
答えを待つ彼の顔を、まっすぐに見ることも出来ない。
「あの…あっちの花壇の水遣りは終わったんだけど…」
苦し紛れにそう言うと、彼はにっこりと微笑んだ。
「ありがとう。じゃあ、ここもお願いできる?」
「わかったわ」
そう答えると、彼はプランターに肥料を与える作業に戻る。
私はホースを片手に、その場に置いてけぼりを食らう。
どうして私はこうなんだろう。
アナタの後姿をただ眺めているだけで。
そのまま二度と振り返ってもらえないような気がしてしまう。
呼びかければ、アナタは私を見てくれるけれど。
でも、私の本当の気持ちは絶対に伝わらない。
見上げた空は怖いくらいに澄んでいて。
私はただその下でどうにも出来ない無力さを覚えてる。
ただ一言、その一言が言えないだけで。
流れる水の様に、この気持ちも流せてしまえたらどんなにいいだろう。
―――好きなんです。
どうしても消えない想いを、そっと心の中で呟いてみる。
END
ようやく泉ちゃんを書きました。かなりショート。
って言うか難しいよ…何?女の子の恋愛?分かるわきゃねえだろっつーの(笑)
独白ものにしないで、いつものドタバダコメディにすればよかったかな…
書いたものを見直した時にふと思ったこと。
これ…いつも兼一の話しを書く時と大差ない気がする。
軟弱な男を書くのが一番楽かもしんない。
最近、兼ちゃんは随分強くなっちゃったんで、微妙に書けなくなってきたんだけどねぇ。笑。
2005/2/2
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