史上最強の弟子ケンイチ 我侭仔猫 |
猫が気まぐれだって、貴方だって知ってるじゃない。
貴方は言う。
どうして、いつもそんなに我侭なんだい?
なにをしても気に入らない、なにをしても拗ねたように顔を背けて。
かけられた声を払って。
差し出した手を払って。
それでも魅惑的に微笑む唇は紅く色付く。
冷めた目も、斜に構えた姿勢も、なにもかも跳ね除けるように。
世紀末が過ぎれば、世の中なんてどこも変わってなどいなくて。
掃いて捨てるほどありきたりなロマンスなんて欲しくもないの。
ただ、貴方が私を見てくれればいい。
猫が気まぐれだって、貴方だって知ってるじゃない。
だって、それがあたしだから。
ただ気まぐれに与えられた愛情なんて。
馬鹿にしてるじゃない。
貴方は言う。
なにが、いつもそんなに気に入らないの?
なにをしても振り返らない、なにをしても鼻で笑って冷めたフリ。
戸惑う表情も。
伺うような声色も。
それでも気遣うように貴方は私を見る。
見せ掛けの優しさも、上辺だけの愛情も、全部蹴り飛ばして。
慌てる様子すら愛しいのに、隣にいるのはいつも別の人。
欲しくもない、その気もないのに優しすぎる貴方の仕草。
曖昧な態度でにごさないでよ。
猫が気まぐれだって、貴方だって知ってるじゃない。
だって、それがあたしだから。
つれない素振りに訳なんかないって。
貴方は思い込んでるのよ。
キミが分からないと呟く唇をふさいで、理解されたくなんかないと、私は突っぱねる。
そんなんじゃない、そんなんじゃなく、もっと私の気持ちを感じて欲しいだけなのに。
貴方は問う。
キミが望んでるものってなんなの?
しなやかな肢体で擦り寄って来たのに、振り返り様に素っ気無く。
悪戯好きな目が。
試すよう微笑んで。
答えなんて、教えてなんてあげない。
立てられた爪の痛みなど、嘗めてあげる。
貴方が私を可愛がってくれたら、ね。
でもそれだけじゃ私はなついたりしないの。
貴方が言うように、我侭だから。
猫が気まぐれだって、貴方だって知ってるじゃない。
だって、それがあたしだから。
子犬のようにじゃれ付いたりしない。
私は貴方の、我侭仔猫。
END
夜目にきらりと光る瞳、ちりりとなる鈴の音、喉を鳴らし爪を立てる―――君は僕の仔猫。
↑実は冒頭にこの文を入れるつもりでしたが、ボツにしました…なんか、世界観を完全無視したやらしさがあったので(笑)
もっとも、今回のポエムもどき(またかよッ)も微妙ですけどね;
兼一の次は連華で書いてみました。
美羽が連華のことネコと同一視してる面があったので、なんとなく連華=ネコのイメージが付いてしまって。
しかも、ネコ=我侭と言う安直な印象で突き進みました。
自分的には彼女のイメージはこんな感じなんですけど…ダメッすかねえ?(笑)
って、いつになった美羽と兼一が書きあがるんでしょう…遠い目。
2004/8/29 「史上最強の弟子ケンイチ/我侭仔猫」 by.きめら
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