史上最強の弟子ケンイチ その日が来るように


「逆鬼」
 俺は冷えたビールを飲もうと開けたばかりのビンを掲げかけた瞬間、その声に動きを止めた。
 訝しんで振り返ってみれば、案の定あいつが廊下に立って俺を見ていた。
 居間の障子を空け放って見れば外は良い天気で、晴れ渡った空から陽光が庭と縁側を照らしている。
 肌寒い冬の僅かだが昼間だけ訪れるうららかな時間…やる事がなければこうして何を考えるでも無しに酒を飲むのも悪くないなんて思ったりした。喧嘩も仕合もない、格闘家としてそんな事を考えるのは些か不純かも知れないが…静かな安らぎである。
 だが、それは遮られてしまった。しかもあいつに。
 あいつ…柔術家であり芸術、哲学に精通した異色の格闘家、岬越寺秋雨だ。
 剣呑な目つきで見やれば、相変わらず感情を表に出さない顔で俺を見返している。俺は、何もかも見透かしたようなあいつの目が苦手だった。
「何か用かよ?」
 俺がそう尋ねたことで会話が始まったのだとでも言うように、あいつは居間へと入ってくると、こっちが怪訝そうに顔をしかめているのも構わずに横へ腰を下ろす。胡座をかいたままの俺に対して、あいつはいつも通りの正座に背筋のピンとした姿勢だった。本当に、見た目といい、性質といい、なんて正反対なんだろう。
「別に何も。君こそまた昼間から酒かい?」
 そう、あいつは笑うでもなく言った。
 用事もないのに声をかけてきて、その上真横に陣取るなんて何を考えているんだろうか…いや、何を考えているか皆目見当もつかないのだ。
 いつだってそうだ。
 およそはっきりした感情を表さない。いつも柔和な笑みを浮けベているか、さもなくば用もないのに笑っていられるかとでも言うように無表情。口数は少ないのだが、時にはこっちは別に聞きたいとも思ってない事でも興をそそられれば驚くほど語り出したりする。かと言って、落ち着きがないわけではない。そのまったく逆だ。落ち着きすぎてて不気味な時だってある。物事を達観し過ぎてるのか、それとも思うことを押し隠しているのかのどちらかだろう。もとより、そんな事も考えていなかったりして…と、色々な可能性を考えさせられてしまう、そういう脈略のない考え事は俺が最も忌み嫌う作業なのに。
 そうなると、こっちが困惑しているのを面白がってるんじゃないか何て捻くれた考え方もしてしまう。
 まあ、俺にとってのあいつはそう言う人間なのだ。
 それは俺が疎いんだとか鈍いなんて関係ない、と思う。
 確かにあんまり周りの事とか他人の動向なんかを気にする性質じゃあないってことは自覚があるし、分かっている。誰かの隠された気持ちを察したり、まどろっこしくてややこしい討論なんかは大の苦手だ。だから人からは怖い人だとか冷たい人だとか第一印象で持たれてしまうのだけれど…それはともかく、他の人間にとってもあいつは謎めいた部分が多いのに変わりはないだろう。分かり辛いのだ、俺とは別の意味で。
 俺がそんなとてつもなく無意味で他愛もない事を考えている間も、あいつは持って来ていた和綴じの本を開いて読んでいた。
 いや、読むフリ…と言うより読みながら、俺の事を見ていたに違いない。
 自分でも分かっているのだが、俺は顔に感情が出やすい。その上、あいつは人の心を読むと言うか、察すると言うか、まあ、そう言うのの勘がとんでもなく良い。だとしたら、俺が何をどう思って考えていたのか大よその見当ぐらい付いているはずだ。
 秋雨は僅かに浮かべた笑みを俺に向けた。いつの間にか本は閉じられて、卓上に置かれている。
「何だよ?」
 その顔を見たら、俺が予想した通りだったらしい…憮然とした顔で俺は相手を睨む。
 それでも秋雨は笑みを浮かべたまま。
 それから少しだけ溜息のような失笑のような息を吐き、再び俺に微笑んだ。
「君は君自分が思っているよりもずっと、精神的に繊細なタイプなんだろうね」
「…………………は?」
 俺は今、目が点になると言う状態が分かった気がした。
 人間は時として自分の理解できる範囲を超えた状況に遭遇すると、一瞬、愕然とするものだと言うが…まさか自分が実体験するとは思ってもみなかった。
「何言ってんだ、おまえ。気色悪い事を言うなよ」
 情けない事に、対処できない場合は俺も固まるらしい…今の言葉は少しばかりぎこちなくて上ずっていたかもしれない。情けないと言うより間抜け過ぎるかも。
 俺は見た目で損する事も得する事もそれぞれに多いけれど、やはり誤解されやすい点は否めない。本当はそんな怖い人間でもなければ、人並みに陽気にだってなる。凹んだり落ち込んだりすることもある。ちょっとぐらい一緒にいれば気が付くだろう、特に態度が分かりやすい俺のことなら。
 でも、あいつが言ったようなことを言われた例はない。
 分かりやすい、でもやっぱりガサツだね、と言われる事は往々にしてあるし、自分としても認めている。
 そんな男を「繊細」などと言うのはどう言う了見だ。
「ったく、相変わらず分からねえ奴だぜ…」
「それは心外だな」
 そう言いはするも、まるで面白がるように秋雨は俺を見やってきた。それが癪に障る。
「君は誰にも気付かれないけれど、誰よりも周囲の人間を気遣うだろう?自分の取る行動ひとつで相手がどんな思いをするのか、自覚しないとしても考えている。その上、相手にそれを感じさせない…気遣われていると気付くと、相手も気遣いすぎてぎこちなくなるからね」
 極自然に互いを思い遣り合うのがベストな人間関係だけれど…と、あいつは俺に言うでもなく呟いた。
「それに」
 と、注意を促すかのように少しだけ強く言って、
「そうすることで自分が相手の中でどう言う風に思われるか心配している」
 確かに、それは誰しもが思う事だろう。
 人にどう思われるかなんて関係ないと思っていた時期もある。つまらない仲良しごっこなど吐き気がすると思っていたし、これまでの人生で敵か味方かで相手を判断するしかない状況に身を置いていた時間が長かったのも原因だろう。そもそも、平穏無事な生活の年月の方が短いのだ。
 確かに戦うことそのものより、敵だろうと味方だろうと戦いの中で妙に気が合うというか、楽しいような気分を感じた事もある。でも、それは一般に言われる友人関係な訳もなくて、拳を交える事で覚える同類意識と言うか…だからと言って、いや、だからこそ、あいつが何を思って今そんな事を言うのか分からない。誰もが少なからずどこかで他人の目を気にするのが当たり前なのだとしたら、それを敢えて持ち出してきた事にどんな理由があるというのだろうか。
 俺に、何を感じたのか。
 だったら、こいつの中の俺はどんな人間なんだろう?なんて思ってしまう。
「誰もが多少の違いは有るもののそう思うだろうね、確かに」
 秋雨は俺の考えをそっくり分かったかのように言う。
「ただ、逆鬼は自分の姿をこうだ、と決め付けて、それを他人にも思わせようとしている様に見えるのだけれど」
「俺が俺自身を演じてるとでも言いたいのか?」
「いやいや」
 秋雨は否定するように掌をこちらに向けて軽く振った。
「君も自分とはこう言う人間なんだと思い込んでいるだけかもしれないからね」
 俺は途端に苦虫を噛み締めたような顔であいつを睨んだ。
 こう言う、まどろっこしい問答は嫌いなのだと、これまでの共同生活でこいつも知っているはずなのに。
「ガサツで乱暴で見た目通りのタフさ、腕っ節の強さと男気…といった所か」
 ふむ、と秋雨は勝手に納得したかのように頷いて腕を組む。
 なんだか自分の事を言われているのに、一人置いてけ堀を食らっているような気分がして、腹が立った。
「おい、秋雨…」
 これ以上くだらない事を言うな、と続ける前に、当の秋雨は俺の言葉を断ち切る様に口を開く。
「それは確かに君自身が持っている要素ではあるだろう。でも、それは君の一部分でしかないのだと私は思うのだけれどなあ」
「あぁ?」
「…見える傷は一つだけでも、傷そのものは一つとは限らないだろう?」
 そう言ってあいつは俺の顔を、性格には顔に付いた傷を見やる…見えない心の傷、なんて甘ちゃんなことでも抜かすつもりだろうか。
「んなもん、他にはねぇよ」
「そうかい」
 くすくすと笑って、秋雨は目を細める…まるで反発する子供でも見やるようで、なんとも言えないバツの悪さを覚えさせられた。
 意地を張ったり意固地になっているつもりはないのだが、もしかしたらそう見えなくもない状態なのかもしれない。そう思うと格好悪すぎてどんな表情を浮かべて良いのやら、分からない。
「俺はおまえが詮索するほどの複雑な人間じゃねえよ。こちとらおまえの言う哲学なんぞに何の興味もねえし、聞かされたって理解できねえからな」
 俺の頭が悪い訳では決してない、念の為。
 簡単な事でも難解な言葉にわざわざ置き換えたり、考え付いた本人にしか分からないような究極の心理なんぞを説かれても結局他人に全部は伝わらないのだ。産まれた所も生きた場所も時間も、その間に経験した事も所詮は違うのだから。だから、そう言うことを究明し続ける哲学だとか精神学と言う学問は嫌いだった。極論から言うと、俺には理解できない考え方だったから、ってことにはなるが。
「学ぶ事は生涯続くものだよ」
「…じゃあ、俺にもおまえと同じようにそれを研究しろってのか?」
「そこまでは言ってないよ」
 そう言ってあいつは小さく笑った…どちらかと言うと、そこまでおまえにできる訳がない、と言われた様な気もする。
 むっとしたままの俺に、秋雨はまたさっきと同じ、面白がる悪戯な目を浮かべた。
「まあ、君自身の選んだスタイルを崩す権利は私には無いからね」
「何だ、それ…」
 何だろう、この変に背筋が薄ら寒いのは。
 分からない事が多くて頭の働きが鈍くなっている。
 いや、俺は分かっているのかもしれない…分かりたくないと何故か思っているのかもしれない。
 どうしだろう?
 何でこんなに怖いのだろう?
 俺を見詰める秋雨の視線が痛いくらいに強く感じる。
「君がどう言う風に生きようと、それをとやかく他人に言われる筋合いはない…と君も思っているだろう」
「まあ、そりゃそうだけど」
 だとしても。
 俺は秋雨が怖いのではない、どちらがどっちと言えないぐらいのレベルで生き抜いてきた豪傑同士だ、今更そんな気もないが命をかけて戦ったとしても臆する事はないだろう。
 俺は…秋雨が言わんとしている事、暴こうとしている事を悟って怯えているのだ。
 そんな難しい事じゃないと分かっているのに、どうしても足を踏み出す事が出来なかったそれを。
 無様にも、俺は俺の背を押してくれる誰かを探していたのだろうか?
「…何が言いてぇんだよ」
 俺は唸るように低く呟き、秋雨を見やる。
 あいつはふっと方をすくめた。
「もう少し肩の力を抜いても良いんじゃないかと、私は思っただけだよ」


 どうしてそんな簡単な事ができなかったのか…分かるような分からないような、今でもそんなものだけれど。
 ただ、たった、それだけのことを。
 凝り固まった既成概念をぶち壊すのだと粋がっていたガキの頃を思い出す。あの時はただの青臭いガキだったけれど、すこぶる威勢が良かったのだけは自慢だ。
 それなのに、既成概念に囚われていたのは俺の方になっていた。
 俺は俺と言う人間の有り方を一つの概念に縛り付けて、そうなるようにし続けて、他人にもそう思わせていた。
 他人に善く見てもらおうとか、格好付けようとか思っての事ではない。
 これまでの戦い続けた日々は、俺に傷つける事以外は忘れてさせてしまった。そして、傷つけようとする人間しか見えさせなかった。
 例え当初はそうでなかったとしても、威嚇されれば誰でも警戒と怒りを覚えるだろう…歩み寄る機会を与えず、また、俺自身も歩み寄る機会を自分から投げ捨てていたのだ。
 その事を知っていたのに、気付かないフリをしたままで。
 それが当たり前なのだと無理やり自分を納得させて。
 いつの間にか、酷く息苦しくなってきたと感じ始めていた事すら無視し続けて。
 俺は認めたくない自分自身を切り捨てる事も出来ないまま、ただただ腹の底に埋めていっただけだった。


「さて、午後の診療を始めないと…」
 秋雨は不意に席を立つと、部屋を出ていく。
 俺は肩透かし染みた相手の行為にも気付かないまま、押し黙っていた。過去から現在、現在から過去へと自分を思い出してはその在り方をなぞっては考え、考えてはなぞってと繰り返していたからだ。
 気付けばとっくに相手の姿などどこにもなく、独り部屋に取り残された気分だった。
 それから、もうすでに生温くなってしまったビールを飲む。
 減った泡と半端な炭酸を喉に流し込むと、酷く苦いような気がした。
 そっと押された背中、突き飛ばすでも突き放すでもない妙な気遣いをしてくれたものだと、何故かそんな風に皮肉ってみる。じゃないと、どうにもこうにも納まりが悪い気がしてならない。
 こんな風な事で悩んだりした事はない。敢えて避けてきたのかもしれないが、答えの見つからない禅問答みたいな埒の明かない作業は苦手なのだ。割り切れないと苛々する。
 でもまあ、たまにはそんな事を考えて見るのも悪くない、と意味もなく思ってみたり。
「ちっ…やっぱり美味くねえな」
 呑み頃を逃した酒ほど不味いものはない。こんな事になるなら日本酒にすれば良かった…冷でも常温でも熱燗でもイケるから。
「捨てるのは勿体ねえしな…」
 しょうがない、と俺は思って立ち上がる。
 美羽が学校から帰ってきたら、今日の晩飯に鶏肉のビール煮でもリクエストすればいいだろう。それなら生ぬるかろうと気が抜けていようと関係ない。
 そして俺は卓上に置き去りにした本を見つけた。先ほど、秋雨が読んでいたはずのものである。
「あいつが忘れてくなんて珍しいな」
 貴重な蔵書も持っているぐらいの奴だ。これがそうでないとしても、本自体を無造作に扱ったりする様など見た事がない。
 大して興味がないくせに、この時ばかりは少しだけ気がそそられた。
 普段からあの男が様々なジャンルの書物を漁っているのは知っているし、その為の博識具合は常人ではない。だとしたら、この本には何が書かれているのだろう…もしかしたら俺にあんな話題を持ちかけたきっかけでも書いてあるんじゃないかとも思って。
 だが、俺は拍子抜けした。
 装丁から古書だろうと思ったのだが、紙が新しい。その上、内容はくだらない三文小説。わざわざこんなモノを古書誌風の写本にする必要があるのだろうか…文字は見紛う無き秋雨の手によるものだった。
「訳わかんねえ…」
 書道家としても大家であるあの男が、何を思ってその達筆な手でこれを書いたのだろう。
 いや、案外、つまらなそうな本でもこうしてみれば中々に見れたものになるだろう?とか言って皮肉るかもしれない…しないかもしれないけれど。
 でも、なんだか妙に可笑しくて、俺は今までの仏頂面に小さな笑みを浮かべた。
 理路整然と何かを考え、話すことばかりがあいつらしいのだと思っていた。
 でも、それは俺の勝手な想像なだけだったのかもしれない。
「意外と、面白いヤツかもしれねえなあ…」
 そう呟いてもう一度笑う。
 とても長い間、笑ってなかったような気がした。




 俺はこの事が突起になり、あいつが苦手になった。いや、そもそも本当に苦手だと思い始めたのはこの時からかもしれない。
 だが、可笑しな事だが、苦手だと認識すると同時に、俺はあいつの事が分かった気がした。
 最初に思っていたよりも、あいつは複雑な人間ではない。冗談も言えば、本気で笑いもする。いつも浮かべられる微笑も意味の無いものではなく、列記とした理由がそれぞれにあったのだ。困惑した時の苦笑、相手を慮る柔らかな笑み、自信と確かな裏付けによる不敵の笑み、憤りにしかめられた顔、憂慮に対する浮かない顔…まあ、気付けば数え切れないぐらいの表情が出てくる。それに、意味もなく無駄な遊びを興じる余裕もある。生真面目一本調子ばかりではないのだと知った。
 奴も人の子、と言う言葉がしっくり来る気がする。今更だが。
「そりゃそうだ」
 分からないはずだ、分かるはずがないのだ、俺が分かろうとしていなかったのだから。
 そして、気が付いてみれば、あの時の秋雨が浮かべた笑みこそ、友を案ずる顔だったのだと分かった。
「まいったな…」
 独りきりでも生きて行けると思ってやって来たのに、ここに来てから全部が変わっていく―――梁山泊に来てからは。
 世界屈指の豪傑が集う異色の道場だと言うのに、居る人間居る人間、全員が変わり者。その中に自分も含まれているのだと言う事は諦めにも似て分かってはいるけれど、それでもやはり、殺伐とした旅暮らしの自分には少しだけ戸惑う事がある。
 それぞれのテリトリーは侵すべからずと言う暗黙の了解の中であるはずなのに、可笑しなぐらいここは平和なのだ。
 時々訪れる勘違い甚だしい道場破り…巷ではそれなりの腕自慢で評判もあるらしいが、ここに居る奴らから見れば素人に毛が生えたぐらいのもんだ…なんかが来ても多少は軽いお祭り気分にしてくれる様な些細な出来事でしかなくて。
 どうも気が緩んでいけない、と思う事もしばしばだけれど。
「あいつも、そう思っての事なのかねぇ」
 傍に居るから、手持ちぶたさに気まぐれを起こしてお節介でも焼いたのかもしれない。
 でも。
 それでも。
 少なくともあの時のあいつは本気だったと分かっている。
 本気で気遣われた事などとんとガキの時以来過ぎて忘れてしまった感覚だけれど…言いようの無い、くすぐったいような、妙な感じがするものだ。だが、それが嫌な訳でもなく。
 と色々考えた所で、やはり気の緩みは変わっていない。と言うより、余計に助長させられた気もする。
 肩の力を抜け、無理に自分を誇示するな、と。
 他者を排除して孤立した所で、一体何が得られると言うのか…そう言えば、初めて会った時にジジイにもそう言われたような気がする。
「まいったぜ」
 俺はもう一度そう呟いて、開けたてのビンからビールをあおった。
 先ほど通りすがりに、「顔つきが変わった」としぐれが言ったが、そんな事は示唆されるまでもなく気付いている。本人の方は相変わらずつっけんどんで無愛想この上なかったけれど。
 問題はこれから先なのだ。
「さて、どうしたもんかな」
 人は生涯学び続けるのと同じ様に、変わり続ける事が出来ると言うのなら、俺はこれからどんな風に変わっていくのだろうか。
 いくら考えたって、分かるはずもないのだけれど。
「この先の事なんて、誰にもわかりゃしねえさ」
 要は、どうしたいか、であって。
 変わるも変わらぬも自分の心根一つで大きく分かれて行くだろう。
 だとしたら、今悩んだ所で詮無き事この上ない。
「もともと、ややこしい考え方は嫌いだからな」
 なんてぼやいてみる。
 もし今のを秋雨に聞かれたら、またもや仄かな怒り顔で人生とは…なんて説教し始めるかもしれない。
 煩わしいとは思うけれど、それはもう前ほどの苦痛は覚えなくなった。
「ま、なるようになるだけだろうし」

 ただ、今日飲んだこのビールは美味いと思った。

 

END

 

 

 


逆鬼、思春期かおまえは?話しでした(爆)

設定としては兼一が来るずっとずっと前、まだ梁山泊内が表面上は淡々としながらもどこかしら殺伐としてた(と私は思う)頃です。
秋雨&逆鬼の名コンビが生まれたであろう所以を書いてみたいなあと思ったのでやってみました。
今回は逆鬼バージョン。
こう書きあがってみると、秋雨のイメージが今と変わらないなあ;
昔からこう言う人だった、と言う気もするのですが。

兼一と言う風変わりな弟子を持つことで、逆鬼はそれまでの彼とはまた変わったのでしょう。
長老が言ったように、それはしぐれに如実に表れているんでしょうね。
人は変わる。悪しきにも善きにも、それは確か。
年月が人を変えると言うけれど、その年月の中で培ってきたものや、経験してきた事、つまり変わる突起となるものがあったからこそ、人は変わるのだと思います。
だとしたら、逆鬼の(最近の)変わり目は秋雨と兼一に寄るものだったら良いなあ、何て思ったりしまして。
すいません、珍しく真面目に本編と後書き書いていたのに、最後に自分の願望が出てしまいました。笑。

では、お後はよろしいようで。

2004/11/25 「史上最強の弟子ケンイチ/その日が来るように/逆鬼」by.きめら

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