雨が降る。
しとしと、と。
絹糸のような雨が降る。
刺すように細く、音もなく。
誰が為に我は在る。
誰が為に我は詠う。
――― 後ろの正面、だぁれ?
あやかし天馬 残酷な御伽噺 |
僕はあんなヤツは今まで見たこともなかった。
何故なら、これまで自分が居た世界には在り得る筈の無い種類の存在だったからだ。
暗く冷たい、息を閉じ込めて瞳を塞ぎ、何もかも呑みこんで行く様な…何もかもから置き去りにされるような、そんな闇の中で生きてきたからだ。
いや、果たしてそれは本当に"生きてきた"と言えるのだろうか。
僕は生きていたのだろうか?死んでいたのだろうか?それとも…
ただ、あんなに眩しいくらいの光は初めてだったんだ。
冷えた岩肌が布越しでも確実に肌を傷つけている。
逃れられない宿命に囚われた呪われの一族の末路、そんなことを思ったりもする。
邪気に禍々しく煌く足枷が重く圧し掛かり、捕らえたこの両脚を地面へと繋ぎ止める。
でも、僕は逃げ出すわけには行かないんだ。
耳障りなあの妖の笑い声が鼓膜を揺さ振る。
下卑たあの笑顔が神経に酷く障る。
―――凶星よ。
星に瞬くが罪無き星屑なれば、どれほど良いだろう。
大禍時に煌く、忌わしき星でなければどれだけ美しいのだろう。
だけど、僕はずっとずっと、闇を見続けてきた。
星も月も何もない、"在るものなど何も無い"闇の中を。
幾千回、幾万回、太陽がその身を大地に照らし出しても。
いつだって僕は奴らを括ってきた。
ずっとずっと、変わらずに。
鬼の手が、何も掴むはずのない手が、全てを統べるあの手が、僕を捕らえて離さない。
おまえは僕とは違う。
おまえまで僕の様に業を背負わなくてもいいんだ。
違う。
背負って欲しくない。
呪われた身など、この血の一滴すら、捨て去っても構わない。
君が生きられるなら。
君がいてくれるなら。
あの日の君が見せた笑顔も、冷たげな月の下で見せた泣き顔も。
傷付いた命の火を映すこの両手を強く握り締め、誓いを立てる…帰れないと。
瞼を閉じれば、嗚呼、君が笑う。
息が詰まるのも構わずに強く抱き締めて、そのぬくもりと気付いてきた全てを忘れないと思った。
戦場を映し出す鏡とともに、此処にある悲しみと君への想いを届けたいだけで。
瞼を閉じれば、嗚呼、君の涙。
明日を望めば、心は耐えてる。
帝月。
嗚呼、闇の中に聞こえるは君の声。
その声が、ずっと僕を呼んでいた。
幾千回、幾万回、響き渡るは光り輝く力強さで。
何度駆け出しそうになっただろう…数え切れないぐらい、闇の向こうで出会うことを待ち続けるその命に。
帝月。
聴こえるよ、天馬。
僕は此処に居るよ。
君の、魂を揺さ振るほどに叫ぶ声が、聞こえているよ。
さあ雨よ、激しく降って。
何も映し出さない僕のこの窓を打って。
会えない時が、苦痛が、悲しみが、突き刺すように鋭く心を打つ。
ただ冷たいだけの、無慈悲な雨が。
君となら違う雨に降られただろうに…
優しい雨は、今は辛すぎる。
そして、それすらも枯れ果てた涙のように止む時が来ることを知っている。
それこそ、残酷な御伽噺のように。
今日も誰かが詠う、呪われた子守唄。
帰れない道すがら、母の手を失った迷い子の為に。
明日も明後日もずっとずっと。
陽気に、残酷に、いつでも誰かが詠ってる。
僕はそれを知っている。
逃れられない宿命だとも知っている。
ただ、もう一度君に会えたらと切に願う。
生きて、生きて、生きて、天駆ける風神の如く。
生きて、生きて、生きて、怒れる雷神の如く。
そして笑って。
野に咲く花のような無邪気さで。
闇夜を追い払う太陽のように。
――― 後ろの正面だぁれ。
嗚呼、今日もあの歌が聞こえる。
END
ゴメン、みっちゃん…救われない…
本当はダークな出だしで、天馬に助け出されて「天馬…vv」みたいな終わりにするつもりだったのに(ぇ)
結局、終始、意味不明だよ。爆。
すいません。
愛だけはあるんですけどね…(遠い目)
逃れられない運命と言うか闇みたいな中を生き続ける帝月と、突如としてその目の前に現れた(帝月にとって)異色の少年・天馬。
今まで見てきた存在とまったく違う、そう思ったんじゃないかと。
で、天馬はまさに闇を照らす光みたいなヤツで(うわぁ妄想爆走だよ、きめらさん;)
考えてたら分けわかんなくなってきたので(腐)、これにて!
2004/7/23 「あやかし天馬/残酷な御伽噺/帝月」 by.きめら
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