俺って結構名前の売れてる賞金稼ぎな訳よ。
 もらう報酬だって相当なもんだしね。
 あの高慢ちきで超ワンマンな帝国だって雇うぐらいだぜ。陰険な暗黒卿からは保証付きの高待遇だったしよ。
 金額的に言えば、あんな辺境にいながらも裏世界では名を馳せるギャングのジャバ・ザ・ハットなんか、いいお客だったかな。ちょっと横柄な態度が気に入らないけど。
 いや、あいつに関わらなければ今頃俺は大金抱えてバカンスだったんだ。けち臭いあの大ナメクジ野郎なんかの依頼なんか受けなきゃな!

 

STAR WARS EPISODEY  おいらは無敵の高額賞金稼ぎ(ボバ・フェットを復活させようの会)

 

 ボバはうんざりした面持ちで、酷く臭い巨大な食肉怪物の腹の中に立っていた。そう、砂漠に生息するサルラックだ。奴は千年をかけてじっくりと獲物をいたぶりながら消化する。
 ボバのすぐ隣でも、一緒に飲みこまれたジャバの手下や賞金稼ぎたちが苦悶の表情を浮かべながらのたうっていた。
 運がいいことに、ボバはまだ無事だ。かと言って悠長にしている暇はない。かせげても数か月…もっとも、食料のないここではそれよりも先に餓死するだろう。
 ボバの運の良さは、強いて言えばどこも素肌が出てないことだろう。あちこちボロボロになった甲冑だが、ないよりは随分とマシだ。それでもサルラックの消化液で徐々に表面が焼けていくのが分かる。ブーツの底も危うい。
 彼は既に死んだ同業者の死体の上に乗り、ブーツを守る。
―――悪いな、生きるためだ。
 彼は自分の背負ったジェットをもう一度確かめた。落ちた時も奇跡的に破損を免れた。燃料もルークたちを処刑する直前に満タンにしたから、まだもっている。
―――後は機会を待つだけだ…
「ガ…ウウウ…ドゥダ…」
 誰かが足元でうめいた。見ると顔は半分溶け、衣服も浸蝕されていた。爛れた手を微かに上げ、助けを求める。しかしボバはそれを無視し、うめくかつての同僚たちを見下ろして、ああはなりたくない、と心から思ったのだった。

 

 二度目の奇跡は起きた。
 砂漠の広がるタトゥイーンでも、雨季というものがある。それがちょうど近かったのが運の良いところだ。
 サルラックが湿気を帯び始めた大気に気付き、体を脈打たせる。その振動を感じて、ボバははっとした。
―――来た…
 雨が降り始めたのか、サルラックが口を大きく開ける。
 突然外気の新鮮な空気が流れこみ、中にまで湿気が呼び込まれた。
 ボバはもう一度エンジンを確認し、サルラックが大量の雨水を飲みこむ前に点火した。
 思った通りエンジンは生きていた。
―――かかった!
 ボバは死にかけた仲間を一度振り返り、悲運なその者たちを残して一直線に飛び立って行った。

 

 外界に出たらびっくりしたね。
 タトゥイーンは大昔に海が干上がって大地が出来たって言う非常に環境の悪い、埃臭い惑星だ。それが、俺が出た途端辺り中が古代みたいに海だ。
 雨季になると砂地の吸い込める許容範囲を超えた水分が降りて来る。だから雨は地下水になれず、地上を氾濫するのだ。
 俺はサルラックの穴の外に不時着してから途方に暮れたよ。なんたって腰より高い水位の中を歩いて街まで戻らなきゃいけない。
 死ぬ思いだったよ、本当。
 サルラックの腹の中だって死ぬかもって思ったけど…洪水は本当、困り果てたよ。なんたって流れもあるし。平坦な砂漠にだって高地と平地ってもんがあるんだ。豪雨でジェットは使えねえし、やっぱ歩くしかない。
 ああ、帰って熱いシャワーと冷たいビールが飲みてえなぁ…。

 

 彼が無事辿りつけたジャバの宮殿でも、てんやわんやの大騒ぎだった。
 なんと言っても裏世界にその名を轟かせたジャバ・ザ・ハットが死んだのだ。無秩序なこの星の権力者でもあるジャバがいなくなって、落ちついているわけがない。
 跡目を狙う薄汚いギャングどもや、買主を失った奴隷女たちが途方に暮れている。
 しかも例年以上の豪雨にあたわてふためく警備が走りこんで来る。豚の生き物みたいに醜いこいつらは、知能もその程度しかないのだ。命令主がいなくなると浸水を防ぐ手立ても見付けられないで、この様だ。
 ボバはその雑踏を尻目に、奇跡的に残っていた自分の荷物を見付けて立ち上がると出て行く。もう、誰も彼に気付かなかった。私利私欲しか目にないやつらばかりだから。
―――しばらく休むかなあ。
 ちょっと今回はハード過ぎた気がする。
 報償金は口座に振り込んでおいたから多分大丈夫。それ片手に高飛びってのも悪くない。
―――しばらくぶりにこの甲冑も脱ぎたいしなあ。命の恩人である甲冑だけども、付けっぱなしてのも息が詰まるもんだし。
 彼は降りしきる雨の中、ステーションに止めた自分の宇宙船を探しに街へ向かったのだった。

 

 なんにも増して驚いたのは、世界中がひっくりかえちまったてことだな。
 だってよ、あんだけ権力を振りかざしてた、いけすかねえ帝国がなくなっちまったて言うじゃねえか。それもあの時捕まえたガキどもの手でさ!
 う〜ん…やっぱしばらくはどこかで療養した方がいいかもね、やっぱり。身を隠すついでにさ。

 

 その後の彼をようとして知るものはいない。
 一生をかけてもまだ余るほど稼いだその金で、リゾートの惑星に楽しい余生を過ごしたとか過ごさないとか。
 なんにも増して充実した老後だったそうな。

 

END

 


映画サイトより移動、しばらく"その他"に入れてましたがSWページを作ったのでこちらに。
当時、何を思ったのかボバは死んでない!死ぬ訳ない!と半ば無理やりこじつけて後日談とか書きたかった覚えがあります。
それでコレが出来たのね。
今更ながらに笑える設定だけど(汗)、とりあえず書いてて楽しかったです。

 

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