STAR WARS EPISODEW 新たなる希望・前夜

 

 シスの暗黒卿は黒い仮面越しに、素晴らしく見晴らしの良い巨大な帝国軍戦艦デストロイヤーの指令室から虚空の宇宙を見渡した。

 漆黒の空間。されど様々なガス星雲や数多の銀河における太陽たちの煌きによって、果てしないそこは複雑で美しい色のコントラストに染められている。無数の星々は小さな無色の宝石を縫い散らばらせたドレスのようで、宇宙そのものが誇り高い女神のその裾のように広がっていた。
 時折、その穏やかな様子は一変する。小惑星群や彗星群などにぶち当たれば、もはや心穏やかに外を眺めている余裕はないのだ。それはあたかも、気が遠くなるほどの長い間、この宇宙を腕に抱き続ける女神の退屈凌ぎのようだった。そう、彼女にとっては運悪く命を落としていた数多くの存在も、唯一のゲームにおける、些細な出来事でしかないだろう。
 彼はこの日、非常に落ち着いた空間を移動していた。だから彼女の格好の遊びにも巻き込まれない。
 彼は様子を無言のまま見詰めている。眼下には中央政府とはかけ離れた辺境にあるために未開発である、小さな惑星があった。非常に美しい星で、このように宇宙から見詰めていても地上の青々とした自然が見えるような気がする。
 暗黒卿は独特の呼吸音を吐き、静かに星を見下ろした。彼の黒いケープは長身の彼の足元まで覆い、彼の内に秘められた禍々しいまでのダーク・フォースを表現するかのようだった。その後姿を、いつ叱責と共に命を奪われるか分からないと言う恐怖を抱いた部下が、畏怖の念を込めて見詰めた。
「…それで、反乱軍の基地は見つかったのか」
 軍司令官と言う高位にあるこの男も、ダース・ヴェイダーの前ではただただその不可解で恐ろしい力の前に震え上がるのみである。彼はヴェイダーに対し、異常とも思えるほどうやうやしく答えた。
「はい。只今探査ドロイドを送りこみました」
 ヴェイダーは小さく頷く。
―――小癪な奴らめ…いかに自分たちが無力であるか、思い知るが良い。

 

 悲報を受けて、レイアは目の前が暗くなるのを覚えた。しかし気丈にも彼女はそれを振り払うかのように立ち上がり、会議室の中に集った仲間を見渡した。
「今、悲しんでいるわけにはいきません。彼らの…勇敢であった同胞の命を無駄にしてはいけません!」
 落胆する人々を叱責し、鼓舞する。
「なんとしてでもこの、邪悪で横暴な独裁帝国を打ち破り、私達の手で宇宙に自由と平和を勝ち取らなければなりません。チャンスは必ずあるのです…今は反撃よりも力を温存し、蓄えることが先決でしょう」

「では、残りの秘密基地も見つかる可能性のあるものから移動させねばいけませんね」
「そうです。今回襲撃された惑星の周辺にある基地を秘密裏の内に移さなければいけません。これは非常に慎重、かつ速やかに行わなければならない重大な問題です」
 レイアは美しい面を、強い決心と共に向けた。
「そのための作戦を会議を始めましょう」

 

「宇宙中が騒がしいのう…」
 小柄な老人は、寂しくなり始めた小さな頭を傾げる。鬱蒼と生い茂る樹木の枝々は、湿ったこの星の空気を受けて、心なしか俯き気味だった。濡れて艶やかに光る深緑の葉が、霧の合間に伸びてくる弱々しい陽光に煌く。
 老人は木製の杖を突き、足場の悪いぬかるんだ大地を進む。時折涼やかな鳥の鳴き声が耳をくすぐった。
「ほう…おまえさん方も不安のようじゃの?」
 森に住む獣たちが遠巻きに、この老人を見詰めている。
「なに、ここには誰も寄りつかんさ。…奴らとて」
 彼は目を閉じた。
 しばらくの間そうしていたが、不意に顔を上げると、空を仰ぐ。
「…そろそろ始まるようじゃのう。この宇宙の全未来を決める戦いが…」
 その目は皺だらけで温和そうな表情とは打って変わって、鋭く空を見上げていた。

 

 見渡すかぎり荒野の広がる大地。強い風に、黄土色の砂が巻き上がる。
 空からは二つの太陽がこれでもかと言うほど強く、眼下に広がるその地を焼き尽くさんばかりに照らしていた。
 一人の老人がいる。
 彼は荒野を一人きりで進む。
 彼は先ほどの小柄な老人ほどではないが、年を取っていた。けれども背筋はまだしゃんとしていて、足腰もしっかりしている。揺るぎ無いその力強い歩みは、岩陰に隠れて獲物を探すタスケン・レイダーたちをも躊躇させている。
 彼はそちらをちらりと見上げ、不敵な笑みを小さく浮かべた。
 やがて見晴らしの良い高台に上がると、前方を見やる。遥か彼方に、小さいがそれはそれで辺境にしては立派に賑わう街がある。それからもう少し手前にはいくつもの農場が広がり、小さな家が疎らに広がっていた。
 彼は溜息にも似た息を吐き、目を細める。
 その表情の複雑さは、一見で読み取れない。悲しみと慈愛と失望と希望、そして懐かしみ…様々な思いや記憶が彼の脳裏を過ぎて行く。
「…時が来たのかも知れぬ」
 彼はそう言って、自宅に戻るために高台を後にした。

 

 この星に住まう彼の若者は、なにも知らない。
 これからどれだけ過酷な運命が待ち構え、彼を飲み込もうと企んでいるのかも。
 彼は知らない。
 その内に秘めた力がどれほど絶大であるかを。
 彼は知らない。
 まだ自分が、余りにも幼く、未熟な子供であることを。
 彼は知らない。
 そう…この宇宙を取巻く本当の悲惨な状況を。なにも知らない。彼がやがて未来を担う大いなる存在になることすら…。

 


遠い遠い昔、遥か銀河の彼方で―――

って事で、エピ4「新たなる希望」直前のそれぞれ、と言う設定でした。
要はあの長大なスペースファンタジーの始まり、その後における映画界へ多大なる影響を及ぼした一番最初の作品と言う事への敬意を称して、SWファンである自分なりの愛情表現です(そして自己満足)。
かなり昔に書いたものなので居た堪れなさが如実ですが、一番最初に書いたSWファンフィクと言う記念モノでもあります。
だから載せたまま消さないんだけど(笑)
少しでもあの作品の「これから始まるのか、あの伝説が…!」と思っていただけたら嬉しいです。

 

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