STAR WARS EPISODEY 深淵ナル宇宙ノ彼方デ私ハ思ウ

 

 それは巨大な戦艦だった。他の宇宙船を威圧し、恐怖させる帝国の戦艦・デストロイヤーである。
 彼はその参謀室にある大きな窓から星々を見下ろし、無慈悲で無表情な黒い仮面で威圧した。
 部屋の遥か後方に立つ兵士達は微動だせず、そんな恐怖の上司を見詰めていた。
 不意に振り返り、彼は独特の呼吸音と共に兵士達を見る。彼らは無言で応えた。
「……」
 彼は漆黒のケープを翻し、その場を後にした。

 

********

「ダース・ヴェイダーよ」
 皇帝は老いてもまだ禍々しいダーク・フォースを身に纏わせており、黒いフード付きのローブから邪悪で好奇な目を覗かせた。
「全ては順調だ…おまえが私の、暗黒面の下僕となり、この帝国の礎を築いた。もう少しで全ての星と存在が私のものになる」
 老人は微かに身を震わせて笑った。

 ヴェイダーはその足元に膝ま付いたまま、頭を垂れた。それを満足そうに見詰め、皇帝は尚笑うのである。
「フフ…おまえがこの宇宙にフォースのバランスと秩序をもたらす希望になるとは、よく言ったものだ。そうだ、おまえはこの私と共に宇宙にダークフォースによる秩序をもたらすのだ」
 答える代わりに、ヴェイダーは無言で頷く。
「かわいい、我が下僕よ。おまえなどどれほどの力がある?私を殺すほどの力がある?どうだ」
「…ありません。そのような力も、思いも」
 恐怖と怒りとで、ヴェイダーは微かに身を震わせた。けれど、皇帝を殺すなどと言うことは不可能であると彼は自覚している。だから…いかに自尊心を踏みにじられようと、恐るべき忍耐力で耐えるのだ。
―――皮肉なことに。
 皮肉なことに、まだジェダイ候補だった頃は忍耐が足りないと散々叱られてきた。けれど、その時に培った精神力が、このようにして役立っているのだった。
「そうだ、この宇宙にあまねく存在たちがそうであるように。私はこの宇宙を支配するのだ」
 邪悪な欲望の権化である皇帝はそう言って両手を上げた。けれどその目は実に聡明で、老人とは思えないほど鋭い。
―――私は間違えていない。皇帝は自分の求めるフォースとその使い方を教えてくれた。この心の求める欲望を正確に導いてくれた。私は間違ってなどいない。
 ヴェイダーはそう自分に言い聞かせて、一瞬脳裏を横切った影を振り切った。

―――私こそ正しいのだ、オビ=ワン。
 皇帝は薄ら笑いを浮かべたまま、ヴェイダーを見下ろしていた。彼の決心や苦悩を楽しむかのように。
「全て、思いのままに。マイ・マスター」
 低く呟くように言って、ヴェイダーが息を付く。
「そのように、我が弟子よ」
 皇帝は答えて、彼を下がらせた。

 

END

 


これは、オビ=ワンの独白・短編『静カナルコノ夜ノ下デ私ハ思ウ』と対で作ったヴェイダーの独白・短編です。わりと気に入ってます。
ところで、皇帝って…まさに悪の親玉って感じに書いてますが…個人的には好きなキャラなんですよぅ。
皇帝ファンの皆さん、お許しください!

2002/4/18 『深淵ナル宇宙ノ彼方デ私ハ思ウ/ダース・ヴェイダー』  By.きめら

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